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「嫌……誰か助けて……」
座敷牢の中から女の叫び声が聞こえて来た。
それを聞いて二人は慌てて座敷牢の中に向かう。
そこでは二人の門番の他に数人の浪士達が、奇妙な着物を着た女の衣服を脱がせ輪姦しようとしていた。
「助けて……お願い!」
女の着物ははだけ露わになった白く透き通った肌が月明かりに照らされてハッキリと見えた。
長い黒髪は乱れ潤んだ瞳からは大粒の涙が零れている。
それを見た瞬間、大樹の中で何かが切れる音がした。
怒りで我を忘れて気付いた時にはその場にいた門番達を女から引き剥がし全員を一人残らず斬り捨てた。
ギャアと座敷牢に響く断末魔、辺り一面に広がる血の臭い、そこはまるで地獄のようであった。
「ハアハア……」
「お……大樹君……」
「……」
一瞬の出来事に渋谷は大樹を止める事も出来ず、ただ見ている事しか出来なかった。
女は目の前で起きた惨劇に意識を失いぐったりとしている、大樹は自分の羽織を女に掛けだき抱える。
「この娘さん、見たこともない着物を着ているね袴もこんなに短くて……」
女の履いている物は膝上だけで素足が露わになっている、見慣れない光景に目のやり場に困った。
「どこから来たんだろう?あまり見かけない娘さんだよね?年も僕達とそれ程変わらなさそうだ」
「……」
大樹は意識のない女の顔を見つめた、この女……どこかで会った事がある?
いや、そんな筈はない……江戸へ来てから女とは殆ど関わりを持っていない。
こんな特徴的な女だったら忘れる訳がない。
気のせいだろう。
目が覚めたら直ぐに家に帰せばいいだけだとその時はそう思っていた。
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