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「椿~~こっちこっち、早くしないと試合始まっちゃうよ!」
そう言って遠くから手を振っているのはクラスメートの由梨だ。
由梨は茶道部で着物の似合う日本女子、たまに自分も顔を出して一緒に活動している親友だ。
今日はもう一人の親友の真美、剣道部の都大会を応援する為に地元の総合体育館まで来ていた。
「由梨ごめんね」
「大丈夫だよ!試合はまだ始まってないから急いで席に行こう!」
総合体育館の二階が観戦席になっている。
インターハイ予選も兼ねているこの試合では、残暑が残る暑さでも沢山の人が応援に駆け付けていた。
熱気がむんむんとしている中、女子の準決勝の始まりに一層大きな黄色い歓声が上がる、そこには女子を応援する為に男子が試合会場に顔を出していた。
「宗司様~~」
「きゃ~~紫狼様~~」
まるでアイドルのコンサートの様な会場内、決勝戦の相手は我が山村高校の剣道部三年主将、宮代宗司と隣りの市の私立松下高校の同じく三年主将、村瀬紫狼、二人は幼い頃から同じ道場で鍛練に励んだ幼なじみである。
「凄い人気なんだね?」
「そりゃそうだよ~椿は授業以外あまり学校にいないから知らないだろうけど、宮代先輩は高校でも大人気なんだよ」
宮代宗司は身長は169センチとあまり高くはないが、素早い身のこなしと技のキレは抜群で、何より面の下にある幼い顔立ちがまるで王子様のようだと、強さとギャップが人気なのだと由梨は言った。
「へ~そうなんだ~」
「そうなんだ~って、椿は興味ないの?」
「う~ん、剣道ってあまり良く知らないんだよね」
「剣道の興味じゃなくて男の事を聞いてるの!椿はフィギュア一筋だもんね……今はスケートが恋人ってか?」
そんなんだから彼氏が出来ないのだと、由梨は嘆いた、スケートに夢中になるあまり、今まで男性に興味を持つ事もなかった。
彼氏を作っても振りまわされるだけだしウザイだけ、一緒に練習している男子もいるが恋愛対象外、何回か告白された事もあったが結局付き合う事はなかった。
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