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「ごめんなさい。ごめんなさい」
彼は今日も泣きます。
人を困らせたいんじゃないんだと。
穏やかな風になりたいんだと。
そんな彼を哀れに思った月は言います。
「冷たいだけが風じゃあるまい。冷たくてもできることがあるだろう」
山も言います。
「風が吹いてくれなきゃ、俺は枯れ葉で埋まっちまうよ」
それでも、彼は泣きます。
「僕はお月様やお山様のように人間から尊敬されたいのに。ちっとも、うまくいきやしない。ごめんなさい。ごめんなさい」
月の言うことも山の言うことも風は聞きません。
「どうしたものかのぉ……」
月は太陽に問いかけました。
太陽は笑います。
「君は風に生まれたが、北からばかり吹いているから冷たいのだよ。海を渡って南からなら、君は温かい風になって人々を賑やかに出来るよ」
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