あたらしい風

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風は、べそをかきながら海に渡ります。 太陽と月は交互に風を見守って、違う山々たちが風を励ましてくれます。 「君が北から吹くのをやめたら春がくる。君が南から吹くようになったら夏だ。また秋には泣きべそをかきたくなるかも知れないけど、そのとき君はもう大人なんだ」 太陽がそんなことを優しく言ってくれました。 海に出て、南から吹こうと風は、はりきります。 「太陽さん、どうして僕にそんなことを教えてくれるの?僕の先祖の北風は、太陽さんと勝負するような風だったのに……」 南から少しずつ陸に上がろうとした風は太陽にたずねました。 太陽は、ふふふと笑います。 「僕たちは、みんな手をとりあっているんだ。僕だけでは春をつくれない。花も咲かせれない。冷たかったり温かったりする風がいるから、冷たい雪を溶かして川にして、花粉を運んで花を咲かせ、涼しい風が夏を彩って、秋にはお米や果物が実る」
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