デジャ・ヴ

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誰もが起床に向かう五分ほど前。 褐色のレンガ色の、 高くそびえている「叶う時と思い出の丘」の時計台の針が、 人々の目覚めをうながす語りをはじめる。 むかし人が言っていた。 planet Earth というところでは、 時計の針の回りがここの惑星とは逆なのだ、 と。 ディスクもはさまれてある新聞のパリッとした制服の配達少年が、 息をきらせながら靴音をたからかに走るのに懸命だ。 人々の仕事がまもなく開始される。 だんだんと、 霧におおわれていた都会のビルディングが姿をあらわしてくる。 青色を灯す信号機のそばの、 planet Earth で言う十二世紀に、 ヨーロッパ地方に現れたゴシック調に似た教会の足もとで、 少年がダンボール箱をたたいては、ドラムを打つ練習を開始した。 大古代時代の建造物の面影を残したこの教会。 そしてこの街の風景と馴染む、 その少年についてデジャ・ヴはよく知っていた。
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