デジャ・ヴ

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「白銀の太陽の日はとても寒いからね」 精霊はそう告げた。 「ありがとう。 なんだかリーヴァさんの贈り物を受け取りに行くのが、 いつもとちがう気分になるよ」 ボクはそう告げると、 精霊はうしろを振り向かずにこういった。 「この道のさきにあるゴシック建築調の教会のもとへいってみるがいい。 今日はそこできみはおもいっきり生きることをみるがいいよ」 今日、ボクとデジャ・ヴは休日だった。 ボクたちは道を進んでみることにした。 置いてきぼりにしてきた、 ジョジョの姿が脳裏をかすめた。 空気が温かみをおびてくる。 澄んだままの空気が明るさを含んでくる。 だんだんと、 ボクの胸にも力強さがみなぎってきた。 馬頭暗黒星雲のむこう彼方へとゆくあの列車は、 ハレーションをまとったまま、 まだ遠くにあるのだけど、 記憶に間違えがなければ、 あれは夜明け後の最終便のはずだ。 確実にこれから、 大きな危険を承知で、 九日ぶんの仕事をする使命があるのだ。 彼は実によく、 あの列車がどこの時空へむかうのか、 むかしはよく知っていたけれど、 いまはジョジョのほうが随分と詳しい。 ボクはジョジョの顔をうかべた。 けれどもその列車の。黄金の太陽のわきを大きくゆったりと迂回してゆくあの勇姿は、 もう誰のまなざしにも見えやしないのだ。
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