母への思い

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母への思い

私の母が入院してもう何年になるのだろう。気の強い母だったが私にはとても優しかった。だが姉にはいつも厳しかった。そんな母も今はもう88歳という高年齢だ。老化により痴呆も出てきている。心臓の疾患も患っていた。私はそんな母を見ていつも私の傍に置いておきたいと思っていた。だから、自分の勤めている病院に入院させて自分で母の主治医となり治療をしていた。それは自分が医者となった時に決めていたことだ。自分が母の最期を看取るのだと。 母は、私の病院に入院してから、病気を悪化させることなく過ごしていた。母は病棟の看護婦をいつも困らせていた。目やにが、ついていても吹かせてくれないのだ。いやだといっては看護婦を困らせていた。看護婦は大きなため息を吐き仕方ないですねと呟くのだ。そんな穏やかな日々を過ごしていても母の老化を止める事は出来ない。母の尿意がなくなり自分で尿をする事が出来なくなってしまった。初めはオムツでしていたのだが、神経因性膀胱と言って尿を出す神経に障害が起こり排尿する事が出来なくなったのだ。仕方なくバルンカテーテルと言う管を入れて尿をカテーテルから出すようにしていた。それが嫌で母は時々自分で抜いてしまうという行動に出ていた。そして皆を困らせていた。そんな母だが私が「母さん、だめだよ」と言うと母はいつも決まってそっぽを向き「嫌なものは嫌なんだよ」と言うのだ。やがて母も年々言葉数が少なくなり話す事が出来なくなってきていた。
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