1人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも人々は、彼が台無しになると見ているみたいだよ」
「そういうの、彼を馬鹿にしている」
「まったく失敗しないことが、人間の道じゃないよね」
「私は逆だと思うわ。彼は神話の領域までゆく。きっとそうなると、私は信じているの」
さらなる輝きへと勝ち得た黄金の太陽の融合熱は、時間の流れをエネルギーヘ変換させて、この街の今日を起動させることに、全身全霊の意志の懸命さでこたえていることを、ボクらは判っていたけれど、誰もその題材に触れることはなかった。その努力のうちにある、そこはかとなく輝く恒星の孤独が、かつてこの世界の創造されたときには、決して小さくはない影響をあたえていたという予測が、現代のこの惑星に生きる学者たちの想像力を掻き回していた。その精神は声高らかで、そのことを報じる新聞記事全体が、いま街じゅうで読まれているはずなのだ。新聞といっしょに挟まれているディスクに入った膨大なデータは、昨日発行の「中央学術の森」というフリー・ペーパーによせられた公開質問の数々の解答を引きだすために、みんなが大切に持ちよった宝のような叡智なのだ。その集積は、毎日指数関数的に増大していたことが、あらたな懸念材料になっていたのだけれど。でも好奇心旺盛なこの街の人びとでも、その事実をまだ誰も知らされないでいたのだ。
宅配仕事の大きな身体の鳥が舞い降りて、透明な空から青い紙に包まれていている赤いリボンの小さな箱を嘴の先からポトリと落とした。それがボクの手もとにやってきた。ジョジョのこころ待ちにしているチョコレートの小箱だ。
「ジョジョ、チョコレートが届いたよ。いくつ食べるのかい」
ジョジョは腰をおろして、シッポを、パタ、パタと、二回やった。
「ふたつ?」
ボクは、ジョジョへの贈り物を開いてあげて、なかにあるチョコレートを取り出した。ボクから差し出されたチョコレートを、ジョジョは上手に食べた。
そしてボクは箱のなかの手紙見つけると、デジャ・ヴといっしょに読んだ。そこにはこうあるのだった。
スーパー・インターネットに関心をもって。三つ向こうの銀河に望みをたくして。
――こころの友、リーヴァ。
「スーパー・インターネットってなにかしら? わたし、知らない」
最初のコメントを投稿しよう!