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デジャ・ヴがおかしそうにする。ボクにとっても、ジョジョにとってもデジャ・ヴは、幼友達なのだ。
「ボクはいまから家に戻って、ジョジョのミルクを温めてあげないと」
ジョジョはお腹を空かせているはずだ。
「またデジャ・ヴに会うよ」
と言うと、ジョジョは飛び跳ねて喜んだ。ジョジョというのはボクの仔犬だ。
「ジョジョはチョコレートが好きだよ」
また顔を合わせた、ボクはデジャ・ヴに言った。その言葉がデジャ・ヴのもとに届いたのか、なんとなくすこし心配になったけれど。
「チョコレートを売るお店のリーヴァさんが今日、ジョジョにチョコレートを贈ってくれるんだ。それが届くんだ。Space craft で七日間の時空を超えておくられてくる舶来ものさ。青い紙で包んであって赤いリボンで留めてある、そう聞いているよ。いつも小さな手紙も入っている」
ボクがそう言うと、辺りにいた夜明けの精霊はデジャ・ヴに向けてこう囁いた。
「ジョジョのチョコレートは遥かな時空を超えた舶来のもの。それでジョジョも二つ歳をとる。最後に歳をとったのは三年前。もう半時間もすると、黄金か白銀かのどちらかの太陽が昇ってくる。さあ、いまからこのアリ塚といっしょに、この場所でどちらの太陽が昇ってくるのか、きめなきゃならないよ。わたしたちは、白銀の太陽をまっている。アリ塚は黄金の側さ。まだ深い寝息を聞かせているけどさ」
ボクらの眼のまえに、ジョジョのチョコレートも積んだ space craft のエヴァー号が、クリスタル・ライトの輝きを放ちながらあらわれては、波の振動を知らない静寂の港の水面に、無駄音をあらわにしない配慮をしているようにゆっくりと着水してゆく。「すべてに解放された港」に接岸の準備をはじめているのだ。エヴァー号をみちびく「すべてに解放された港」の管制塔の長官が、目覚めの早いカモメたちの一陣から発せられる歓声のほうへ視線を向けた。
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