全1章

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 エヴァー号の入港の許可をあたえたのは、二年前ここへ抜擢されたまだ若き青年で誇り高き人物のブリジット長官だ。若きクレバーなバンドのメンバーたちが六〇〇〇万光年の時空の旅の成功をたたえて、夜闇の開けきれぬ前の碧い空と海とで共に喜んでは、シャンパンのお祝いの開始と、space craft の錨をおろす船の音が聞こえてくる。その音が、峻厳なる山肌の威厳までも乗り越えては、広大な大地に広がり黄金色を放ちもする小麦畑の輝きにまで響き渡っていった。写真記者たちが記念すべきこの船の来航を歓迎すべく集まっては、ストロボの光をたくさん放っている。 「一・二・三、ゆけ!」  とアリ塚が、通りの良い声で叫ぶと、途端に足もとにあった星たちが、上空に跳ね上がって、彼の家の横の道のうえに、整然と青白い光のまっすぐな二列となってボクらの進む道を浮かびがらせた。誰にも判らないうちに、ボクらにも知らせないままで、もうアリ塚は目覚を覚ませていたのだ。 「ほら、黄金の太陽がのぼったよ。アリ塚の勝ちだ」  そう言う精霊は、深かった夜が夜闇の幕を跳ねのけるように励ました。 「白銀の太陽の日はとても寒いからね。なんだか安心してリーヴァさんの贈り物を受け取りに行けそうさ」  ボクはそう告げると、精霊はうしろを振り向かずにこういった。 「この道のさきにあるゴシック建築調の教会のもとへいってみるがいい。今日はそこできみはおもいっきり生きることをみるがいいよ」  ボクとデジャ・ヴは休日だった。道を進んでみることにした。置いてきぼりにしたと、ジョジョの姿が脳裏をかすめた。空気がだんだんと温かみをおびてくる。澄んだままの空気が明るさを含んでくる。だんだんと、ボクの胸にも力強さがみなぎってきた。馬頭暗黒星雲のむこう彼方へとゆくあの列車は、ハレーションをまとったまま、まだ遠くにあるのだけど、記憶に間違えがなければ、あれは夜明け後の最終便のはずだ。確実にこれから、大きな危険を承知で、九日ぶんの仕事をする使命があるはずだ。彼は本当に、あの列車がどこの時空へむかうのか、むかしはよく知っていたけど、いまはジョジョのほうが詳しいのだけれど。ボクはジョジョの顔をうかべた。けれどもその列車も、黄金の太陽のわきを大きくゆったりと迂回してゆくあの姿は、誰のまなざしにも、もう見えやしない。
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