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やがて街のなかばまでやってきて、まだ朝霧に包まれているその場所で大きく息を吸ったボクは、眼を凝らすにはおよばなかった。デジャ・ヴがボクの手を握ってボクをとめた。そのとなりにいつの間にか小さなジョジョが腰をおろしていた。それからまた、こちらをみつめては朝日のなかを、ジョジョがもうしわけなさそうに腰をあげてこちらにやってきて、ボクのとなりに座り直すなり頭をさげた。ボクはジョジョがいつやってきたのか知らなかったけれど、ジョジョのほうでも知らん顔をした。デジャ・ヴがなにか囁こうとしたとき、黄金の朝日が、ボクたち三つの命のまわりの風景を鮮やかに照らし始めるのだった。そのときボクはデジャ・ヴからスノー・ホワイトの、いままでとは別の人生がつめられているような、真新しい薄い本をうけとった。デジャ・ヴは言った。
「誰の描いた絵かは判らないけれど」
デジャ・ヴのそのスノー・ホワイトの本は、きれいな虹のように、ボクが普段抱く気持ちを和やかに愉しませてくれる画集なのだ。ページをボクは開けてみた。みずみずしい若葉の形のしおりが、画集を汚さないようにはさまれてあった。ボクは本を開けてみたのだけれど、やっぱりこう言った。
「なんだかボクは、この画集を見ると不思議な催眠術にかかちゃいそうだよ。まだ今日が始まった時だよ」
ボクはそういうとデジャ・ヴに本を戻そうとした。
「今日はお昼寝するといいわ。今日はそういう日なの」
デジャ・ヴはそう言うと、空をみあげることをボクに思い出させた。ボクは空を見上げた。黄金の太陽が映す輝きわたる雲に、希望の調べを詠んでほしい、と彼女は願っているようだ。
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