全1章

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 急にデジャ・ヴがボクの左手首を掴んで誘うのだ。ボクたちふたりは全力で、ambulanceのジョジョのあとを追った。ドラムの少年がにこりとすると、誰知らずボクたちの後押しした。デジャ・ヴはボクの手元を離さない。その手を今度はボクが握り返してみて、ボクは高鳴る鼓動を耳もとで激しく聞いた。  どのくらい駆けただろう。道の向こうの小高くなっているところに、ジョジョが舌をハッハとさせて座り、シッポをパタパタとさせてこちらを見詰めて待っている。そこでボクたちは四つの塔が立つ古いお城の遠景を見ながら話をした。夢中になった。  話は尽きず、ゆっくりと戻った早朝の教会の足もと、少年の表情には曇りがかかって見えた。ボクは、はっとした。 「わたし、少年のちからになりたい」  そう言うデジャ・ヴにも、具体的な手段があった訳ではなかっただろうけれど、ボクは彼女の気持を大切にしたかった。少年の生きる世界には、哀しみの色彩となつかしい故郷の匂いと採れたての食べ物の味と子供の時の感覚とそして冷静でかつあたたかな気持と、それらのみがあった。彼のリズムはそんな彼の身体から刻まれていた。 「そうなのか。立派に刻んでいるのに。まったく……」  デジャ・ヴ自身もやっぱりほんとうにつらい思いを通ってきたから、そのことがよく判るんだとボクは思った。ボクは少年にエールの気持ちも送った。 「ほんとうにそう思ってくれる?」  デジャ・ヴはボクの考えをよく理解をしているようだった。 「ああ、思うよ。でも詳しいよね」 「わたし、この街のなかで予想を語っているの。それがわたしの仕事。わりと人間のことを知っている」 「きみ、とても若いよね」 「つぎの誕生日で、十七になるわ」                                                                                                                                                    「何年、その仕事をしているの?」
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