裁判所における供述

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 重苦しい雰囲気の裁判所に男が警官四人に警護されながら入場してきた。だが、重々しい雰囲気はすぐに壊れた。入ってきた男は剃られてない無精髭を生やし髪はついさっき久方ぶりにシャワーを浴びたようなパサパサでとてもあの世界的な怪盗王とは思えなかった。  裁判所は静寂と疑惑の眼差しが渦巻きながら裁判が始まった。男は検事の質問に「はい」っと言って頷くだけの裁判は終始この禅問答が続いた。検事もそれを察してか、はい、いいえで答えられる質問しかしていない。  それに対して傍聴者は下向いて居眠りしたり途中退室したりと気になるお宝の行方など聴けずに退屈していると、とうとうこの裁判の判決が言い渡された。 「被疑者を死刑とする」  裁判長が判決を言い渡すと傍聴者の多くがため息を吐いた。その中には伸びもする人もいたほどだ。それだけこの判決は予定調和でここに来た人達が求めていた予想外の出来事などなくて非常に退屈な裁判だった。そう、このまま終わればの話だが。
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