斜陽

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 そこでテレビの画面は切り替わり、緊急中継が始まった。  化粧が派手なアナウンサーが、青ざめた顔でニュース原稿を読み上げる。その声は震えていた。 「トップニュースです。今日、政府関係者が来年にも、移民などで増え続ける人口に苦しむ諸外国を支援する名目に、海外から大量の子供たちの受け入れを認める声明を発表しました。私達が掴んだ情報によりますと、少子高齢化により労働人口が激減し、経済が停滞している我が国に新しい風を入れるためということです。しかし、海外の子供達を大量に受け入れることによる言語的、宗教的問題や、彼らの生活の保証などの問題は棚上げされており、我が国の混乱は避けられないものとなっております」  その中継が流れ、俺たちの頭は真っ白になる。  ついに、その日が来た。  上の層が減らないなら、下の層を増やせばいい。その数合わせのために、海外の子供を利用する。小学生でも分かる答えだ。でもー 「……細胞だ」 「どういうことだ」  依楓は笑っていた。その笑顔は、狂気のそれだった。 「細胞は集まって組織を作り、臓器を、そして人を作る。それと一緒だ。人間も集まって組織を作り、社会を、国を作る。そして、癌化は細胞から始まる。つまり、悪い影響を及ぼす癌細胞さえなければ、この国は」 「おい、依楓。しっかりしろ」  俺は依楓をテーブル越しに肩を掴み、揺り動かす。依楓は夢から覚めたように眼を大きく見開いて、歯をガチガチ鳴らしていた。 「なあ。俺達はなにを守ろうとしていたんだろう。眼の前の命か、自分の生活か、それとも、この国か」 「すべてに、決まっているだろう」 「俺は、この国が日本人の手によって守られて欲しかった。でも、もう無理なんだろうな。皆が選んだ終焉だ。日本は今日、ここに終わった」  依楓はそうして顔を伏せた。
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