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三十年後
それから三十年後
「その薬は、この癌には適応にはなっておらず使用できません。なぜそのようなことを尋ねられたのですか」
鼻で笑った金髪の医師とは反対に、通訳の女性は慇懃な日本語で返してくれた。本当ならば、英語に慣れ親しんだ私に通訳などいらない。
「分かりました。それでは入院を受け入れるとお伝え下さい」
通訳が日本語を英語に変換していく。それを聞きながら、医師は英語でカルテに記載していく。その電子カルテの左に、私の病名が記載されている。
Pancreatic cancer stage4
つまりは、こういうことだ 膵臓癌、ステージ分類Ⅳ
医師から入院に必要な書類を受け取って診察室を出る。詳しい説明はナースから訊いてくれとのことだった。
「See you」
口笛を吹くように軽やかな響きで医師は私を見送った。外来の扉が閉まる寸で、私は医師に別れの言葉を告げた。
「I was wating for at this time、私はこの時を待っていた」
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