講演 ー変わりゆく世界ー

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「見ろよ、あの看板」  依楓が前方を指差す。  そこには公園があり、五、六人の爺さんや婆さんが、ゲートボールに勤しんでいた。その公園の中頃にある看板は『子供の立ち入り禁止』を掲げていた。 「信じられるか、公園が子供の立ち入り禁止区域だなんて」 「依楓、気持ちは分かる。だが声を落とせ」  俺は咳払いをして、話しを区切る。依楓のやり場なき怒りは収まらず、固く握られた拳で、自分の太股を力任せに叩いた。  こんなことがあった。  ある子供達が公園でポータブルゲームをしながら歩いていたところ、散歩を楽しんでいた爺さんに誤ってぶつかってしまった。運の悪いことに爺さんは転倒し、その拍子に大腿骨を骨折。二度と歩けない体になってしまった。  これが波紋を呼んだ。  公園に子供達で集まってゲームで遊ぶこと自体に問題があるという声や、子供達が外で体を動かす事が少なくなっているのに公園の存在する意味がないという声、何よりこのような事件が今後起きた時に子供は責任を取れないという声が四方から上がった。  そうした声に動かされ、政府は公園の子供達の立ち入りを禁止するという英断を下したのだった。
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