1話 さぁ始めるか

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今日も定刻通りに設定したアラームが鳴ったと同時にタツヤを強制的に覚醒状態へと移行させる。 これは比喩表現ではなく本当に定刻通りにプレイヤーを覚醒させるという機能で今日も朝早くから働かなければいけないほとんどプレイヤー達はこの機能を重宝している。  まだ眠気の残る頭をブンブンと振り回し空中に展開した仮想デバイスの「身だしなみ」を押す。すると寝癖の残るタツヤの髪や洗っていない顔や磨いていない歯などが都合よく直されて外に出ても恥ずかしくない姿へとなった。  「便利なもんだな...」とタツヤは関心のため息を漏らす。 この生活になってまだ半年ほどしか経っていないがタツヤはもうこの生活に適応し始めている。最初はすったもんだがあったが、その他の1千万人くらいのプレイヤー達も自らの置かれた状況を理解し各々が今日も生活をしていくのである。さて手早く朝食を済ませ急いで賃料一ヶ月45000Gの仮アパートを出る。もちろん相棒の「カタナ」を背負って。  街はまだ朝早いというのにもうマーケットの方は人の群れで埋め尽くされ威勢のいい店主たちの客寄せの声から一方宗教家たちの神の素晴らしさを説いている。そこを走って抜けていくとタツヤの仕事場がある。  そこ大きな建物の玄関には大仰な看板が飾ってありそこには大きな字で、「帝国重工」と書かれている。玄関の扉を開けるともう既にメンバーたちが依頼の書類を見たりアイテムを製造したり酒を飲んだりとそれぞれが思い思いのことをしている。  「帝国重工」とはこの世界におけるギルドという組織であり、「重工」という名前の通り馬具やら武器やら防具やらのアイテムを提供する代わりに対価を得るという組織である。しかしそれだけではやっていけないということが分かり迷い猫の捜索から要人の護衛から簡単な討伐までやるまさに「何でも屋集団」になっているのが現実である。しかしどうやら業績はなかなかのものでギルドマスターいわく「そろそろ街の1等地に移転するかもしれない」と言っていたのを覚えている。  とりあえずカウンター席に座りとある人物の到着を待つ。  「...ったく...あいついっつも遅刻するから今日こそ早く来いよって言ったのに...」  タツヤは時間に厳しい人間のため度々時間については揉めたのだが一向に遅刻グセを直そうとしないまだ未到着の人物を待ちながら今日の依頼の一覧を眺めていた。
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