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私は意気揚々と、たまに足を縺れさせながらエントランスを潜った。
「おはようございます」
エントランスには受付があり、その受付カウンターに2人の女性の姿があった。
2人とも綺麗にメイクを施している。
髪もクルクルと巻かれていて美しい。
……そういえば化粧道具1式が置いてあったが、面倒そうだったのでスルーしてきた。
つまり、私はスッピンだ。
髪は邪魔だったので、後ろに1つで結んであるのみ。
ちなみに選んだスーツはタイトスカートではなく、パンツスーツだ。
そのうちの1人に挨拶され、慌てて私も頭を下げた。
「おはようございやす! 新入社員の宇名田 真希っす。よろしくお願いしやす!」
――完璧だ。
昨日までウナギだったとは誰も思うまい。
私は心の中でほくそ笑んだ。
だが、受付嬢の笑顔は引き攣っている。
何故だ。解せぬ。
「……ああ……新入社員の方ですね。直接部署の方へと伺っております。こちらへどうぞ」
私は女性の後ろを付いていった。
エレベーターとかいう鉄の箱に乗り、3階へ着くと右へ。
その廊下を突き当たりまで進み「こちらです。松野部長! 新入社員の宇名田さんお連れしました」と、言った。
「お、来よったな! おおきに!」
松野部長にそう言われると受付嬢は頭を下げ、元来た道を戻っていった。
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