鰻ターン① (彌砂)

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「わ……! 恥ずかしいです……誰にも言わないでください……人間に憧れているなんて仲間に知れたら大変です」 私たちの仲間を次々に捕獲していった人間に憧れるなど言語道断なのだ。 「してやろうか? 人間に」 「……え!?」 私は耳を疑った。 なれるの!? 私が? 人間に!? 「人間になったら何がしたい?」 「私は……」 パネルの王子様を見ると、私に優しく微笑みかけた気がした。 「恋が……してみたい!」 甘くて切ない恋を、素敵な恋を! 私は自身の身体を見た。 黒く、艶やかな肌。 柔らかく、細い身体。 私はその身体をくねらせ、踊るように泳ぐ。 そう、私は―― 【ウナギ】 鰻のままでは王子様に恋愛対象どころか、食糧にしか見てもらえない。 「そうか、ならばチャンスを与えよう。人間になるにはそれなりの代償を払ってもらうがな」 魔女は、クククと口角を釣り上げ顔を歪ませた。 「な、なんでしょう?」 「お前から“女子力”を奪う」 女子力……? 私は首を傾げた。 「知っているか? ウナギはミステリアスな生き物だ。そんなお前が人間になったらすぐに願いは成就してしまうだろう。ちなみに成就出来なければお前は蒲焼な」 「そ、そんな!」 恐ろしくて身体がうねる。 それでも私はこのまま大人しく魚生を送りたくはない。
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