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それに、放っておいてもいつか捕まって、蒲焼エンドを迎えるかもしれない。
それならば――
「それでも……私は人間になりたい!」
魔女はニヤリと笑うと、手にしたステッキを翳した。
黄金色に輝く光と渦が私を包んだ。
「きゃ……!」
私は渦に巻き込まれ、どんどん湖の水面へと上昇していく。
「ククク……面白くなりそうだ」
魔女の言葉を最後に私の意識も黄金色の光と共に薄くなり、そして閉じた。
「……ん」
次に目覚めると、そこは既に水の中ではなかった。
「…………」
なにやらフカフカとしたものに私は身体を横たえていた。
恐る恐る初めて得た手を動かし、眼前に翳す。
黒でもなく、銀でもなく、ぬめってもいない。
肌色だ。
そのまま頬に触れるが魔女のように鱗もないようだ。
頭に触れれば髪も生えている。
私であって、私ではない感覚に呆然としていると、突然声が聞こえた。
『無事に人間になれたようだね』
ビクリと身体を強ばらせ目線だけを動かすが誰もいない。
『私の声はお前にしか聞こえない。まずお前にはやるべき事がある』
「やるべき事?」
『服を着るんだ。そこに置いてあるだろう。好きなものを選べ。身につける方法はわかるはずだ』
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