鰻ターン① (彌砂)

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そういえば、知らなかったはずなのに寝ている場所が“ベッド”だということも、ここが“部屋” だということもわかる。 どうやら最低限の知識も魔女は与えてくれたようだ。 私はゆっくりと床に足をつけ、歩いてみた。 縺れそうになりながら服の置いてあるソファへたどり着く。 下着と洋服がテイスト違いでいくつか置いてあった。 着替えを終えると何故か魔女は盛大に吹き出した。 「な、なに?」 どこかおかしかったのだろうか? 『お前……そのチョイス! 安心したよ。ちゃんと女子力は奪えたようだ』 全身が映る鏡を見るとそこにいたのは、えらくラフな格好をしている自分だった。 何がいけないのだ。 服なんて着れりゃいいし、楽に越したことは無いじゃないか。 『ワンピースも用意してやったというのに……顔も身体も最上級にしてやったんだ。ククク……頑張れよ!』 「何を?」 沈黙。 『いや、お前。恋愛したいんだろ?』 「はっ! そうだった!」 『お前、忘れるなよ。蒲焼まっしぐらだぞ』 「余裕っす。こんだけ美女なら、すぐにでも完全な人間になっちゃいますよ」 『では……健闘を祈る! 明日から働く職場も用意してやったから行くのだぞ? 働かざるもの食うべからずだ』 この時私はまだ知らなかった。 恋愛において、どれだけ女子力が必要かと言うことを――
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