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そういえば、知らなかったはずなのに寝ている場所が“ベッド”だということも、ここが“部屋”
だということもわかる。
どうやら最低限の知識も魔女は与えてくれたようだ。
私はゆっくりと床に足をつけ、歩いてみた。
縺れそうになりながら服の置いてあるソファへたどり着く。
下着と洋服がテイスト違いでいくつか置いてあった。
着替えを終えると何故か魔女は盛大に吹き出した。
「な、なに?」
どこかおかしかったのだろうか?
『お前……そのチョイス! 安心したよ。ちゃんと女子力は奪えたようだ』
全身が映る鏡を見るとそこにいたのは、えらくラフな格好をしている自分だった。
何がいけないのだ。
服なんて着れりゃいいし、楽に越したことは無いじゃないか。
『ワンピースも用意してやったというのに……顔も身体も最上級にしてやったんだ。ククク……頑張れよ!』
「何を?」
沈黙。
『いや、お前。恋愛したいんだろ?』
「はっ! そうだった!」
『お前、忘れるなよ。蒲焼まっしぐらだぞ』
「余裕っす。こんだけ美女なら、すぐにでも完全な人間になっちゃいますよ」
『では……健闘を祈る! 明日から働く職場も用意してやったから行くのだぞ? 働かざるもの食うべからずだ』
この時私はまだ知らなかった。
恋愛において、どれだけ女子力が必要かと言うことを――
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