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普通な人たち
ああぁ、おかしいおかしい。
普通であるはずなのにどこかおかしい。
違和感?そんな言葉じゃ言い表せないんだ。
目も耳も鼻の穴も口も二つづつあるのにどうして何がおかしい。
ああ、そうか。
とうとう僕の方が狂ってしまったのか。
いつから僕自身が普通であると思い込んでいたんだろう。
そうか、そうだろうな。
電車の窓に映る自分の姿を見て気づいたよ。
僕には何かが足りなかったんだ。
でも何が足りないんだろうか。
手も足も二つづつある。
指だって二十本あるのに何かが足りない。
何が足りないのかはわからないが、僕には何が足りないのだとすぐに分かってしまった。
ああ、あぁ、そうか。
それが僕には足りなかったのか。
近くにいた女性が快く僕に足りなかったものをくれた。
なんていい人なんだろう。
満ち足りた僕は嬉しくなった。
心が晴れ晴れと清々しい。
彼女には最大限の感謝をしたんだ。
だって、僕に足りなかったものをくれたのだから。
ありがとう、ありがとう。
ああ、でも何故だろうか。
彼女が動かなくなってしまった。
周りの彼らも僕から距離をとっているように思える。
僕は彼女に感謝をしただけだというのに。
何故だろうか。
物々しい制服の人に囲まれてしまった。
僕は何もしてはいないのに。
どうしてそんなにひどい扱いをするのだろう?
ああ、よく分かった。
制服の彼らも足りない人たちなのだ。
それなら、僕が彼らの足りない部分を探してきてあげよう。
彼女が僕に綺麗な口をくれたように。
僕も彼らに綺麗な口をあげようじゃないか。
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