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私とジオスの愛と慈しみの勉強が始まったが、それは思った以上に困難な道のりで、ジオスも私も将来への不安と手の届かない夢に虚しさを感じた。
何しろ私は自殺明けであり、ジオスが転職するには死神を辞めなけれならない。
そもそもジオスは円満退社ができるのだろうか?人間社会でさえ、ライバル会社へ転職するとなると揉める事が多々ある。ジャニーズとか吉本興業など、芸能界では干されたりするんだよ。
「ねー、ジオス。どんな顔で大学に行けばいいのよ?」
私は寝ぼけまなこで乱れた髪を洗面所の鏡に映してジオスに聞いた。ジオスは隣で唇を泡だらけにして歯磨きをしている。
背が高いので話しかけるたびに見上げ、心なしか肩が凝って首が痛い。
「別に普段どおりでいいだろう」
「そうは言っても、あの悪どい彼と顔を合わせるかも知れないのよ?町の小娘を餌食にするゲス野郎だわ」
私は時代劇の悪代官をイメージして文句を吐き、ショートボブをセットしてメイクをきっちりと決める事にした。
意地でも惨めな顔で学校には行けないと、鏡の前の自分と向き合う。
「なんなら殺してやってもいいが?」
「アハハ、冗談よね。それじゃ一次審査で天使不合格よ」
私はヘラヘラと笑ったが、ジオスは表情を変えず、本気なのだろうか?と気になった。実は深夜まで二人でワインを飲み、途中から記憶が危うい。
「ねー、ジオス。死神でしょ。あいつら殺してくれない?だってこんな可愛い子にあんな仕打ち。ひどくない?」
なんて、酔っ払って何度か口走った気がする。クールなジオスもワイングラスを傾け、簡単に殺せるぞと笑った。
「ところでジオスも学校へ行くの?」
「もちろんだ。俺の姿が見えるのはツグミだけだからな。一緒に勉強するさ」
「あー、恋愛考察だね。私の友だち集めて調査してみよ」
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