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私はベッドで上半身を起こしてジオスを見つめ、まだ少し体調が悪くて頭が朦朧としたが、ジオスの存在が幻想ではないと理解している。
『血を流し過ぎたかな?』
外国のモデルみたいで、ユニクロの新素材のようなサラッとしたシャツにチャコールグレーのジャケットとスリムなパンツをコーディネートしている。
『お洒落な死神ですね〜』
靴はカンガルー皮のスビングルブーム?アスリートみたいに肩幅が広くて、凍り付く湖でサーモンと水球でもやってそう。
私はマンションのバスルームで手首を切って自殺しようとして、この見知らぬ死神に助けられ、今は左手首に几帳面に包帯が巻かれて苺柄のパジャマを着せられている。
そして彼は私にジオスと名乗り、過去に想いを巡らせて転職の理由を語り始めた。
「ブラック・カーペットさ」
「なにそれ?」
「死のフォトグラファー。ノミネートされた者だけが歩ける」
「アカデミー賞のレッドカーペットみたいなものね?」
「そうそれ。俺は写真部門の最優秀作品にノミネートされ、ブラックカーペットを歩いていた」
私は死神たちがハリウッドのスターみたいにドレスアップして黒いカーペットを歩くのを想像した。残虐な映像と写真に地獄のミュージックがノミネートされ、受賞者は牛と豚が屠殺された血のステージで、ドクロのオスカーを手にするのだろうか?
「俺が撮った死の瞬間のフォトグラフは憂いと微笑みを浮かべた女性の顔だった。まるで天使みたいに」
「ふーん。それでドクロのオスカーは貰えたの?」
ジオスは都組の想像する魔界と地獄系のロジックを否定しようとしたが、鼻で笑ってから賞についてだけ答えた。
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