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元彼と向き合う
「ジオス」
「なんだ?」
「私、向き合ってみるよ。そうじゃないと、半分死んだままだもんね」
ジオスはそんな私を見つめて、ショートボブの髪を優しく撫でて頷き、階下に向けて指笛を鳴らした。
それは風を切り裂き、館内に美しい音色を響かせたので、私は普通の人間にも聴こえたのかと下を覗き込み、階下から見上げていた三浦紀人と目が合った。
「いたぞ!」
一階のロビーを探し回っていたのか、紀人が慌てて仲間を呼び、エスカレーターに乗って追いかけて来る。
「来たよー。ジオス」
もはや、嘆きと怒りを超えて私は何も怖い物がなくなり、暫しエスカレーターに座り込み、追って来る元彼とその仲間が駆け上がるのを笑顔で待つ。
「ツグミー」
エスカレーターの真下に奴らが現れたので、私は首を傾げて顔を見合わせてから立ち上がり、上階へジャンプして目の前から消える。
するとジオスが入れ替わるようにエスカレーターの降り口に立ち止まり、クールに奴らを待ち受けた。
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