罪の裁定

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「やめてくれー!」  紀人の悲痛な叫びが室内から通路まで響き渡った。金縛りにあったように身動きができずに、下半身丸出しにされて股間の大事な物がテーブルに晒されている。  紀人は都組がカッターナイフを顔の前でカチカチ鳴らして近付いて来るのを見て、魔物が乗り移った元彼女にギロチンの刑に処せられるシーンを想像した。  その頃、腰や膝を打撲して痛がっている三人の男を一瞥してエスカレーターを上がって行くド派手な女性がいた。  エレガントなつば広の帽子に赤と黒のロングワンピース。背も高くてモデルのようなスタイルだったが、年齢不詳で見た目以上に若くはないと永井と山口と松嶋は目配せしている。 「大丈夫か?」 「ああ、紀人が心配だ」 「おばさん。どこへ行く?上は取り込み中だぜ」  そう言われて、サングラスをした女性がエスカレーターの上で振り返って見下ろし、三人の若者を睨んで鼻で笑った。 「お前らこそ、もう上がって来るな。邪魔なんだよ」
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