プロローグ・志望動機

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「天使の微笑みを讃えた美しい女性の死顔に観客はどよめき、驚嘆したが。賞賛されたのは残虐な殺され方をした醜い死顔の写真だった」  悲哀のこもった表情でそう言ったジオスに、悪いけど私も『やっぱりね』と思った。  ジオスはそれを予期して、ブラックカーペットを歩きながら将来を杞憂したらしい。残念ながら自分の『芸術』を理解する者はこの世界にはいない。 「天使に成りたい。俺はあの写真を撮った時、美しい死に顔の女性に思いを馳せてしまったのだ」  しかしジオスは眼差しを伏せて、憂いの籠った声で本物の天使を見たことが無いと吐露した。 「天使は架空の存在であり、絵本とおとぎ話の中にしか存在しないと死神の世界では教えられている」 「死神もいないと思ってたけど。いたんだね?しかもイメージとはだいぶ違う」 「そう、死神がいるという事は天使が存在しても不思議じゃないと思わないか?」 「まー、そうだけど」  ジオスは本気で天使に転職したいと願っているようだ。だとしたら、自殺しようとした私を助けたのは気まぐれではなかったという事か?
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