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床に体育座りしてズボンのベルトもせずに涙ぐんでいる。
私は屈み込んでそれを見て、もしかしたら紀人は悪というより、可哀想な奴なのかと、こっちの方が悲しくなった。
「ねっ。ほんの少しでも、私のこと好きな時ってあったの?」
テーブルの下を覗き込んで私がそう聞き、まだ何も答えないのでテーブルを退かして、カッターの刃を向けながら再度声を荒げて質問した。
「だいたいさー、なんでゲイなのに私と付き合ったのよ?」
ジオスが私の横に立ち、腕を組んで興味深そうに被告人の答えを待っている。
ブルーの瞳を冷たく輝かせ、もし私を侮辱するような発言があれば容赦なく死刑を宣告する雰囲気だった。
実は死神のジオスには人間の感情が理解できなかった。特にそれに恋愛が含まれると、全くもって人間は不可解な行動をしてしまう。
しかも自ら墓穴を掘り、失敗の歴史を繰り返してしまうのだ。
それを嗅ぎ取るのが死神の能力であり、仕事であるのだが、天使に転職する上ではそんな能力よりも、人間の感情を左右させる恋愛を理解する必要があった。
「愚かな者よ。正直に話せ。ツグミの慈悲が得られるかもしれないぞ」
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