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元彼の懺悔
ジオスの厳しい通告が聴こえた訳ではないが、紀人は諦めたように立ち上がってシャツの裾をズボンの中に入れ、ベルトを閉め直してから近くにあった椅子を引き寄せて腰掛けた。
「好きな時、もちろんあったよ」
紀人は少し俯きながら、萎んだ花のように都組の方をチラッと見て話し始めた。
「可愛い子だと思ったし、話したら明るくて楽しかったからね。でも、ツグミが言うように俺、ゲイなわけよ」
紀人は恐怖ではなく、今は悲しくて涙ぐんでいるようだった。私は微かにだが、自分が好きになった紀人の存在がそこに見えたような気がした。
「心では女性が好きになれる。そう思い込もうとしているだけかもしれないが。嘘ではなくて、ツグミを好きな時、けっこうあったんだ」
しかし、すぐに沸沸と怒りが込み上げてきた。
今更そんなこと言われても嬉しくもないし、ゲイだとカミングアウトして罪を正当化するつもりか?
『ふざけんなだ』
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