魔女の介入

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 永井と山口と松嶋はドアを閉めて逃げられないように立ち塞がっている。  紀人が壁側へ行き、都組もサングラスの女性も自分達を無視して意味不明な会話をしているようだったが、三人の若者は年増とはいえ獲物が増えて喜んでいた。 「いや、そいつの裁判中だったんでね。それで知らせってのは?」  ジオスは相変わらず普通に会話していたが、この状況でカッターナイフで脅かすわけにもいかず、私は刃を戻してからポケットに入れてロザンヌと紹介された女性に頼み込んだ。 「あのー、すいませんけど。まずはこの状況を片付けてからにしませんか?」 「ああ、そうね。もっともな提案ですわ」  ロザンヌという女性がそう答えて、ルイ・ヴィトンのハンドバッグからスマホを取り出して、三人の若者を振り返ってスピーカーにして話した。 「お願い。摘み出してくれる」  それを見てジオスが興醒めした表情でドアの方に背を向けて私に小声で呟いた。 「こいつは魔女で、死神の重鎮であるスタインベックの娘なんだ」
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