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魔女の占い
「あら〜、もう一人いたのねー」
ロザンヌが思い出したかのよう語尾を上げて、茫然と立ち尽くしている紀人に迫った。
私の元彼は少し後退りして、壁に背中をくっ付けて震えている。
仲間が風に攫われるように追い出されたのを見て、この女性が普通じゃないと思い始めたのだろう。
「あんたがそもそもこの原因を作った人間ね?」
つば広の帽子を私の方へ投げて、サングラスを外して紀人の顔を覗き見た。その顔が異様に変貌して、紀人が顔を真っ青にして怯えている。
「それで、恋の裁判中とか言ってたわね?」
ロザンヌは笑っているようだが、口角が異様に吊り上がって頬が唇で占領されている。目尻も器用に動かして魔女の片鱗を醸し出し、裁判を早く終わらせる気だった。
今日二度目の恐怖劇場である。
私は紀人が失禁して、気絶するのではないかと少しだけ心配したが、顔はついほころんでしまう。
「はい。ゲイだと白状させて、私に恋の感情があったとは言ってましたが、真実か嘘かははっきりしていません」
「お前らが現れたから、恋の考察が進まない。俺の探究心を邪魔しないでくれないか?」
「死神が恋とか愛を学ぶつもりか?馬鹿じゃねーの」
武器マニアのカザンがそう言って嘲笑ったが、ロザンヌが手を上げて黙らせた。
私はジオスとカザンが争いになるのではないかと心配したが、魔女がいる限りその心配はなさそうだ。
『なんか、ジオスのことが気になる。これは恋心?』
私が帽子を持って心の中で呟いていると、ロザンヌが紀人を睨みながらヴィトンのバッグからタロットカードを出した。
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