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しかし目が醒めると私はベッドに寝ていて、背の高い北欧の王子様のような死神に傷の手当てをされて生き返っていたのである。
微かな記憶では、血に染まったバスタブの中から抱きかかえられ、湯気でくもる浴室から寝室のベッドまでお姫様抱っこされて運ばれた。
そんなシーンを走馬灯のように覚えている。つまり全裸を目の当たりにされ、パジャマを着させてくれたのもこのクールな死神ってことだ。
今思うとそれも恥ずかしいが、その時は何も考えられなかった。感情も思考能力も皆無だったのである。
「貴方、誰?」
「ジオス。死神だが、君を殺すつもりはない」
「そうなんだ。……もう少し眠ってていいかしら?」
「どうぞ。俺のことは気にしなくていい」
そして少し眠った後で、私はこの非常事態に驚き、自分の事は棚に上げて文句を言った。
「ぜった〜い死んだはずなのに生きている。しかも天使に成りたいという、死神に助けられた。こんな事って有り得ますか?それに死神って、もっと怖くて怪物みたいな感じだと思ってたんだけど」
しかし暫くすると、私は自然とジオスを受け入れた。それは死神にしては見映えがいいからという事だけでなく、きっと一度死んでしまったからである。
しかも、ジオスは不思議な現象を淡々と説明してくれた。
「普通なら死神は人間には見えない。つまり俺が見えてるということは君が死と生の間にいるからだろう」
「なにそれ?」
「はっきりとは言えないが、死神が人間を助け、完全に蘇る訳がない」
「つまり私はハーフ&ハーフってことね?」
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