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「一つだけ資格が必要だと、アカデミーの審査員が俺に漏らした事がある。自分の作品を評価してくれた重鎮のアドバイスだから、信頼できる情報だと思う」
「なに資格って?」
「愛の真実を知る事。それこそが天使に必要なライセンスなんだ」
「なるほどね。真実の愛ではなく、愛の本質を解明するってことね?」
部屋は狭いが田舎の実家の稼業が木工所なので、家具だけは木の匂いのするシックなテーブルと椅子を使っていた。
私は既にベッドから起き出して椅子に座り、ホットココアを飲みながら暫し考え込み、ジオスはその斜め前で白い息を吐いて優雅にブラックコーヒーを飲み、白夜の世界観を日本製のインテリアに吹き込んでいる。
「私、電気ケトルみたいに熱くなって恋するタイプなの。自殺する時にも思ったんだけど。なんで見かけでけで、何も知らない人を簡単に好きになってしまうんだろうって?」
「軽薄と一言で済ます事もできるが、それはツグミだけとは言えない。人間全般に言える事だ」
「け、軽薄?または尻軽女?」
「いや、だからそれはツグミだけじゃなくて、全般的にだ」
「まるで死神は違うみたいな言い方ね?」
「とにかく、愛の真実を知ればそれも解決できるよ」
「そうね。私がハーフ&ハーフから完全に蘇るためにも、ジオスにその愛のライセンスを速やかに取得して欲しいものだわ」
「ツグミ。協力してくれるか?」
「うん、わかった。一緒に頑張りましょう」
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