恋愛考察

2/3
前へ
/68ページ
次へ
「一つだけ資格が必要だと、アカデミーの審査員が俺に漏らした事がある。自分の作品を評価してくれた重鎮のアドバイスだから、信頼できる情報だと思う」 「なに資格って?」 「愛の真実を知る事。それこそが天使に必要なライセンスなんだ」 「なるほどね。真実の愛ではなく、愛の本質を解明するってことね?」  部屋は狭いが田舎の実家の稼業が木工所なので、家具だけは木の匂いのするシックなテーブルと椅子を使っていた。  私は既にベッドから起き出して椅子に座り、ホットココアを飲みながら暫し考え込み、ジオスはその斜め前で白い息を吐いて優雅にブラックコーヒーを飲み、白夜の世界観を日本製のインテリアに吹き込んでいる。 「私、電気ケトルみたいに熱くなって恋するタイプなの。自殺する時にも思ったんだけど。なんで見かけでけで、何も知らない人を簡単に好きになってしまうんだろうって?」 「軽薄と一言で済ます事もできるが、それはツグミだけとは言えない。人間全般に言える事だ」 「け、軽薄?または尻軽女?」 「いや、だからそれはツグミだけじゃなくて、全般的にだ」 「まるで死神は違うみたいな言い方ね?」 「とにかく、愛の真実を知ればそれも解決できるよ」 「そうね。私がハーフ&ハーフから完全に蘇るためにも、ジオスにその愛のライセンスを速やかに取得して欲しいものだわ」 「ツグミ。協力してくれるか?」 「うん、わかった。一緒に頑張りましょう」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加