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「愛を感じたことがある?恋から愛に変化していく実感みたいなのあった?」
その質問にカップルは顔を見合わせ、友梨と茜は私を見つめてキョトンとしている。
「私はそもそも愛って何?って感じだわね。だから、気にしないようにしてる」
「お母さん見てると、父の文句ばっかり言ってるけど、愛してるのかなーって思う時はあるよ。でも友梨と同じく、茜には皆無だね」
「オレたち、高校の入学式の時に出会ってすぐに付き合ってるんだ。なんかその時からずっと運命みたいなの感じてるよ」
「そうね。私たちその頃から結婚しようって話してるから。最初から愛なのかも」
その二人の発言にどよめく愛を知らない人々。私は拍手をして振り返えると、ジオスも私に促されるように苦笑いして拍手をした。
友梨と茜はおめでとうと言って、そのカップルと握手までしている。愛を宣言すると称賛されるのね。
「その時、何か見えない力みたいなの感じなかった?」
「えっ?どういうこと、ツグミ」
私は目を閉じて少し考えた。すると、なんかざわざわと心をくすぐるものを感じた。光の風が心をよぎる。
「運命って、誰かが偶然に見せかけて計画したのかも知れないでしょ?」
みんな一応に私の質問に困惑したが、愛を宣言した彼氏の方が答えてくれた。少し照れているのか、彼女の方を見て笑顔を見せている。
「入学式の日、桜の花びらが彼女の頬に貼り付いてたんだ。それが気になって」
「ちょっと、それわざと?」と友梨が聞くと、彼女は笑ってこう言った。
「まさか~。風のいたずらですよー」
「だってさ」と、笑う友梨と茜。
私はジオスとテレパシーみたいに心を通じ合わせて話した。今まで気づかなかったが、感性が鋭くなりそんな能力も身につけていた。
『天使は些細な小道具を使うのかしら?』
『死神は絶望を印象付ける。天使にも法則があるのだろう』
ジオスも私にしか聴こえない声でそう言った。いや最初から普通の人間には聴こえないんだけどさ。
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