元彼との対決

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元彼との対決

 ジオスはその意味を噛み締めるように、涙目の私をクールに見つめている。後で「そう言われてみると、面影はあるな」と呟いたが、この時は無言を通して私の感慨深い言葉に微笑みを浮かべた。 「死顔は初めて見たよ」  卒業旅行で友達とスペインへ行っていた時に祖母は亡くなった。余命宣告されていたのに、私が心配しないように病気を隠していたんだ。 「私は完全におばあちゃん子だったの」  両親は離婚して、母は私がまだ幼い頃に好きな人と出て行って事故で亡くなったと聞いている。私が恋にうなされるタイプなのは、恋多き母の血筋かも知れない。  その母代わりになって、私を心から愛して育ててくれたのがこの写真の祖母である。 「ツグミ。あなたは崖の下を覗き見て、海の底に誘い込まれる性格。感情の起伏が激しいのよね。いい、困った事があったら、いつでも私に言いなさい。おばあちゃんが絶対に助けに行くからね」  何処にいても貴方を助けに行くから。それがおばあちゃんの口癖だった。 「ツグミ。感傷に浸っているところ悪いが、奴らが来たぞ」  ジオスが遠くを見るような目をして私に忠告した。元彼が三人の悪友を連れて図書館のロビーに現れたようだ。友好倶楽部のネットワークを駆使し、SNSでツグミがこの付近で見かけたという情報を得て追って来た。  私は涙を拭ってコピーしたデータを消去し、メモリカードを取り出してジオスに返す。
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