第2章

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しかし、それはそれだ。互いに向かい合い、正対した相手である所の━━酷く不機嫌さが前に出ている━━、ギルバートの台詞まで嘲りはしていない。 「あれあれ~~? まさか貴方も入学式ボイコットですか、ギルくん?」 「あだ名を付けるな」 「略語ですぅ♪」 「尚ダメだろ」 呆れた声音で、しかし視線は星純を射抜いて外さない。ギルバートの険悪な目付きは、元々の悪さも合間って随分鋭くなっていた。 おまけとばかりに、あからさまな敵意まで込めて。こんな視線を貰う心当たりは、まあ無くもない。 「そんなに睨んで、何か用?」 「用事という程ではない。ただ姿が見えなかったからな」 確認を兼ねて、と。そう告げるギルバートの声音は、至って普通の音色だ。 感情の乱れている感じがしない。けれど、星純の感じ取る敵意は間違いようが無いし、眼光も尖ったまま。5メートルと離れていない距離が、また妙に生々しい。
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