第2章

12/53
前へ
/614ページ
次へ
「殺す気は無かった筈だ、多分だけど。殺気はエグいが、殺意は薄い」 「勘で物事を計っちゃだめですよ~~? 確証は無いんですからね♪」 「なんで楽しげなんだよ……」 「うふふ~~♪ なんででしょうね♪♪」 「音符をいっぱい出すんじゃない」 言い合いつつ、緩く警戒の気配を出すのは、きっと彼女が熟練の戦士だからだ。コミカルな言動と裏腹、配る視線が微かに鋭い。 恐らく、この展開をリリーは予想していなかったのだろう。事の起こりが、予期していたよりずっと早かった、という意味合いで。 入学初日の、ほとんど正式な初顔合わせで、お互いの実力も領分も知るよしがない。逆に言えば、何時かは起こって然るべき現状だけど、禄に相手を知悉出来ない今日この時に、起こる筈は無かった。 無ければならなかった。なじる訝しむならまだしも、暴力沙汰だけは。 「イヤなタイミングで襲われたもんだ」 「あ、分かっちゃいます? まさか今日は無いと思ってたんですが、してやられちゃいました」
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加