第2章

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素直に、困ったように眉根をひそめるリリー。そりゃあそうだろうと、星純は鷹揚にため息をつく。 「暴力ってのは洪水と同じだ。切っ掛けがあれば、多勢は堰を切って溢れ出す。それが誰かの作為であるなら尚のこと」 裏社会の面子の話し、あるいはイジメの発端とか。何処かで誰かにナメられたり、不意に弾かれたりすると、それを合図に後追いする奴が現れる。 必ず、絶対数は。そういう光景は、『ソドム』の場末で嫌でも見てきた。 「まぁ、あっちも狙って来たんだろうよ。あのギルバート、なかなかインテリ入ってるみたいだし」 「それは勿論ですよ。彼もまたグラン家の一員、“アークス”の一角ですから」 「なるほど…………お坊ちゃんってわけだ」 星純は苦笑する。やれやれ、向こうからしたら、こちらの気勢は随分と平和に見えるみたいだ。
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