第2章

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四角の名家、その一つでも声を高らかに扇動すれば、一夜にして侵略戦争を開始できる。リリーの言葉を借りれば、つまりそういう事だ。 〈四大名主〉の権勢はあまりに強大である、ということ。ゆくゆくは家督を継ぐことになる、将来を約束された子弟となればより明確だ。 良い印象として覚えてもらたい。悪い印象は避けたい。そして次期当主には、どうやら気に入らない奴がいるらしい。 まったく、身も蓋もない話だ。あるいは、益体も無いはなし。なんの保証も確約もないご機嫌伺いに、こうも大人数が躍起になる。 それも仕方がないことだと、リリーは言っていたけれど。なにせ、この学校は超が付くほどの名門で、『アルビオン』各地の名士がこぞって後継者を送り込むような、ちょっとした権力の坩堝なのだから、と。 知ったことじゃない。星純はそう返してみるけれど、リリーは結局肩をすくめるだけ。事実ですからと言わんばかりに。 というわけで、リリーは今ここにいない。色々とやることがあるんですよ、なんて尤もらしく告げるに留めて、食堂から風の様に消えてしまった。 「━━しかも、グラン家は外交・渉外に名のある家柄だからな。顔は広いしコネも深いし、ギルバート・S=グラン自身の注目度も高い」 「注目度?」 と、レオンは説明を続けている。リリーの話に無かったワードが、星純に引っ掛かった。
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