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林立した廃墟の中央、めくるめく幹線道路の集積地にて、戦術核クラスの都市破壊爆弾が炸裂すれば、手入れの無い地上数十階建てなどひとたまりもない。むしろ形が残っているのが奇跡だ。
自分と同じように、と。
龍二郎は一考してから、右手に納まる杖を見遣る。あくまでも、形を残してぶら下がる、潰れたままの左足。
「では問題です、ハチくん」
後ろには、少年がひとり。付かず離れず、割合と遠目に距離を取った様子は、きっと心の現れだ。
「只今の時間は午後5時20分、日は沈みきってそろそろ夜にもなりそうな雰囲気。そんな中、どうして男二人でこんな瓦礫の山を歩かなければいけないのかな?」
「誘ったのはそっちで、オイラじゃない」
ハチは不機嫌そうに告げる。見て分かるようにそっぽを向いて、不満に満ちた唇は尖ったまま。
背中さえ、視界に入れたくないらしい。それ以上の意味は無いだろうから、恐らく周りに配した『アンヘル』の防諜員には気付いてない。
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