第2章

32/53
前へ
/614ページ
次へ
そんな、ハチの年頃なムッツリを尻目に、龍二郎と女性とが何やら話をしていた。ハチに聞こえない声音で、二言三言。 何をしているんだ、とも言えないハチ。やり場に苦労する視線もあるけど、録に名前も知らない人間は、警戒して然るべきだし、なによりいま、顔は赤いのだ。 『━━じゃあレディ、そういう事だから』 『了解!! では不肖、このヨルちゃんが! 早速マルチくんを連れていくとしよう!』 『え? なんて?』 そこからは速かった。自分自身で「ちゃん」まで付けて、やたら張り切る様子の、ヨルと名乗った女性は高く舞い上がる。 華麗に、くるくると回転しながら着地する先はすぐ後ろ。ハチの背後。 気付く間も無く、ハチの身体が軽々と持ち上げられる。 『え? ちょっ……』 『カモン! ライダー仮面号!』 『それなんかおかしくない!?』 ハチの抵抗も空しく、状況は目まぐるしく移り変わる。逆さまに突き刺さったバイクが唸りをあげた。
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加