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エンジンの轟音、タイヤがひどく回転する。焦げたゴムの臭いが漂う頃には、瓦礫に刺さった頭が飛び出し、彼女の前に座席を着ける。
全てをひとりでにやってのけた。音声認証と自己判断AI、それに近くで見るとよく分かるけど、シャーシやらカバーやらもかなり上質な代物を使っている。
とても、スラムでは手に入らないようなものばかり。この人は━━ヨルとか言っていたけれど、一体何者なのか。
『ではよろしく、ミセス。また後日』
『応ともミスター! でも私のことは気軽にヨルちゃん♪ と呼んでくれたまえ!』
『うるせーー! さっさと降ろせッ!!』
ハチの抵抗も甚だ空しく、バイクに跨がったヨルは猛スピードで現場を離れる。背中に残した龍二郎の姿が、秒単位で小さくなる。
あの若頭を、取り残す事には異論はない━━いや、むしろ感謝すらしているがこれは内緒━━けれど、バイクを飛ばす理由が思い付かない。まだ彼女が現れて、正味一分も経っていないのだ。
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