第2章

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そうはさせじとハチが動く。ミツの「三回廻ってお手」が炸裂する前に、一回転半くらいのところを無理やり切り上げヨルを指差し。 「いい気になるなよアンタ! 肉はみんなで仲良く分けろとオイラ達の……」 「にーちゃんって誰だい? パンチくん」 ヨルは至って、平坦な表情で聞いてきた。危うくハモりそうになったハチは、出掛けた言葉を飲み込んでしまう。 飲み込まざるを得ない、と言うか。その言葉は場所を選ばず、時を選ばずハチの脳裏に刻まれている。未だ、その肉の欠片も見つけられない、あの人の背中。 ハチは動揺していた。けれど、それでも気をとり直すようにハチは笑って見せた。自前の跳ねた癖毛が揺れる。 「い、良いだろう……いや、良いかよく聞け! にーちゃんは凄いんだぞ!」 「ふむふむ」 「まずこの家を造ったのはにーちゃんだ! 前住んでた家は壊れちまったが、お古として残してたのがここだ! 屋根があって壁があって寝床があるんだスゲーだろ!!」 「ほうほう」 「それに頭もイイんだ! 足し算や引き算だけでなく、掛け算とわり算も出来るんだぞ! インスーブンカイには挫折したらしいけど!」
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