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「へぇへぇ」
「それに何より腕っぷしだ! にーちゃんが喧嘩に負けたところは見たことない! ナイフも銃もロケットランチャーもなんのその! 械獣だって素手で倒すし!」
「あらあら、すごいね~~」
今一つ、彼女には感動が薄いようだ。ハチの自慢げな講釈もどこふく風、といった様子。
周りの子供達も、欠かさず合いの手を入れてくれたのに。これじゃあ間抜けなガキんちょだと、ハチが因縁めいてヨルを睨む。
因縁めいて、というか、完全にむくれて。全く以て年頃な、子供らしい反応を流し見て、ヨルはまた一言告げた。
「それで? にーちゃんはいまどこに?」
子供を、子供らしく扱うスキルが大人の証明なら、ヨルはきっと大人じゃあない。ハチは考える。
だって大人なら、こんな大人げ無い質問はしない。ここに居ないと分かっていて、この世の中がどういう仕組みで出来てるのか考えられるのならば。
「ここに来たときから見当たらないね~~留守なんだろうけど、散歩?」
「そ、それは……」
「ああ、もしかして家出かしら? 皆を養うのに疲れてノイローゼとか? あ、ごめん。もっとオブラートに包むべきだったわ」
「にーちゃんはそんなこと……!」
「でもなぁ~~、おかしいなぁ辻褄も合わないし。これじゃあ、もう死ん」
バン。
大きな音。
ハチがテーブルに、小さな手の平を叩き付けている。無意識で、反射的に飛び出た行動に、ハチ自身も少し驚いた。
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