第2章

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沈黙が空間を包む。誰も彼も口を開かず━━いや、目の前の彼女はそれでも、口を開こうとしていた。 「あのね……」 「ごめん。ちょっと……ごちそうさま」 ハチはひとり、席を立つ。誰に言うでもなく、そそくさと玄関から出ていく。 「あちゃ~~。ごめんね、空気悪くしちゃって」 「い、いえ…………お気になさらずに、だにゃん」 ハチが出ていってから、そろそろ15分。玄関の戸が閉められてから、食卓はそろそろと解散していった。 規律正しく、無理やり引っ張ってきた水道の流し場へ食器を返し、示し合わせたように寝床へ着いた。ミツや他の子供らには当たり前の光景でも、ヨルには不可思議でならない。 「それにしてもよく教え込まれてるよねぇ。最初から出来たわけじゃないでしょ?」 「にゃん。私たちも捨て子だったし、大変だったもので……」 「それをにーちゃんが助けてくれた?」 「……にゃん」
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