51人が本棚に入れています
本棚に追加
沈黙が空間を包む。誰も彼も口を開かず━━いや、目の前の彼女はそれでも、口を開こうとしていた。
「あのね……」
「ごめん。ちょっと……ごちそうさま」
ハチはひとり、席を立つ。誰に言うでもなく、そそくさと玄関から出ていく。
「あちゃ~~。ごめんね、空気悪くしちゃって」
「い、いえ…………お気になさらずに、だにゃん」
ハチが出ていってから、そろそろ15分。玄関の戸が閉められてから、食卓はそろそろと解散していった。
規律正しく、無理やり引っ張ってきた水道の流し場へ食器を返し、示し合わせたように寝床へ着いた。ミツや他の子供らには当たり前の光景でも、ヨルには不可思議でならない。
「それにしてもよく教え込まれてるよねぇ。最初から出来たわけじゃないでしょ?」
「にゃん。私たちも捨て子だったし、大変だったもので……」
「それをにーちゃんが助けてくれた?」
「……にゃん」
最初のコメントを投稿しよう!