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「なるほど。いちばんの年長さん、ってわけね。兄ちゃんだのにーやんだのって呼ばれるのも分かるよ」
「やん……ですにゃん?」
「まぁとにかく、パッチギくんが兄さんをスゴく尊敬してたのは理解した。意地を張るのも分かるけど、もうちょっと話し合いたいよね~~」
「……たぶん、尊敬どころの話しじゃないのですにゃん」
ぽつり、ミツがこぼした言葉。ヨルは「どういうことかね?」と、怪訝に返す。
ミツはわざとらしくテーブルから立ち上がった。簡素なシンクに納まる食器類を手に取り、それらを片付け始める。わざとらしく。
「とても普通に、ただのありふれた話しですにゃん。孤児が飢えて死ぬのも、オモチャみたいに殺されるのも。誰も守ってくれないから、自分で生き抜かなきゃならなくて、けど何処かで失敗して死ぬ……よくある話しですにゃん」
いたく実感の籠った口調に、皮肉めいた語りが混じる。『ソドム』でなければ、とても十幾つの女の子が話すに相応しい台詞じゃないのだが。
いや、『ソドム』で無くともこれくらいの話し、掃いて捨てるほど積み重ねられてはいるか。今の時代、世界の全てが文字どおり荒野と成り果てた永遠の世紀末に、人権を無視せず話を進めるのは難しいのだし。
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