51人が本棚に入れています
本棚に追加
しかもその理由が、自身でも充分に理解できてしまうあたり余計に厄介。ヨルはミツの言葉を咀嚼するよう、じっくりと後ろ姿を見遣る。
…………
そして一言。
「━━ミツちゃん、可愛いねぇ?」
「にゃ!? はにゃん!?」
おっと、心の声が。飛び上がるように振り向くミツに、ヨルは緩い笑顔をとって返す。
「いやいや、ゴメンね。脅かすつもりは無かったけど、つい」
「おど、脅かしてますにゃんそれは! いや、でもいま間違えないで名前を……」
「フフフ♪ それくらいの気紛れはレディの嗜みさ♪ だから、これも気紛れだよん」
そう、ふざけた調子でヨルが言う。そしてすかさず椅子から立ち上がるや、
「とうっ!」
気の抜けた気合いと共に。
瞬間移動をミツに仕掛けた。
「にゃ、にゃあ!?」
実際には━━確証はないけれど━━、目の前の大きなテーブルを意にも介さず、特段溜めが必要なモーションも挟まずに、お互いの距離を跳躍で埋めた様子。それら全てを、ミツには認識できないスピードで執り行った。
最初のコメントを投稿しよう!