第2章

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のだろう、としかミツには分からなかった。それ程までに影も形も無く傍らへと現れていたし、そもそも先の発言で心は十分乱されていたから、重ねられた驚きに為す術なんて存在しない。 だからミツは状況を理解できず、おろおろと取り乱していた。何が起きた、何があった、どうしよう、どうしよう。 ここに来て、一周回って身の危険をすら考えてしまう始末。少しばかり、涙目にもなってしまった。 ヨルは、そんな子供を応鷹に抱き締めた。緩く、弛く、ただ朗らかに。 「大丈夫大丈夫! お姉さんに任せなさい!」 ここでもまた、驚きだ。しかも幾分に心地良いのが、なお驚き。 ミツがそうして、呆気にとられていると、ヨルはあっさり抱擁を解く。たかだか数秒の出来事で、何が起きたか分かったものじゃないから、感触も何も身体には残らない。 「…………っあ」 「よし、もうオーケーだね! 次はハチノスくんか、待っててね~~!」 妙に気分を高くたもって、ドヤドヤ出ていくヨルの足取り。閉める扉の音まで、心なしか軽やかに。 残されたミツは、一気に手持ちぶさたへと追いやられる。気付けば、心の方は随分と落ち着きを取り戻していて、洗い残しの食器にも気を配れるようにはなっていた。
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