第2章

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もちろん、オイラだってそう。違いがあるのは、別に逃げてきたわけでは無く、連れてこられたという点。暗く、湿って、とても汚く、誰かに何かをされていた様な場所から。 「……」 ハチは軒から顔を出すと、ロクに見えない夜空を見上げる。今日もしっかり雲に潰され、『ソドム』の天気は曇ってばかり。 でも、今時分は風の具合で、微かにその裏側が覗けるのをハチは知っている。ちらちらと生まれた切れ目の奥、雲の端切れを退かした先。 一瞬だ。その一瞬だけは、本当に綺麗な星空が見える。 にーちゃんと来た最初の夜と、何も変わらないままに。きらきら輝く「星」と、「空」を生まれて初めて眺めたあの時と、まるで同じ。 「ヤッホウ!」 「ンギャア!!」 いや、同じじゃない。まるで違った。 記憶にある中では、少なくともこんな間抜けた悲鳴は上げなかったし、こんな具合に間抜けな登場をかます何者かもいなかった。しかもその何者かが、ピチピチのライダースーツなんか着込んでいるし。
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