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殆どは愚痴だった。八つ当たりと言っても良い。けれど、ヨルは何も言わない。
「家族がいるとか、大事じゃないとか……言うのは勝手だ。大人の言い方はいつも勝手だ。自分の思い通りにしようとして、他人の事を考えない……そんな大人ばっかりだったよ、オイラの、オイラ達のまわりは」
両親のことは、言わなくてもきっと分かってる。今さら顔も思い出せない、そういう役柄だったとしか思えない誰かさん。
今ごろは、何をしているのだろうか。別の子供が、その役割を押し付けられてるのなら、やっぱり可哀想だな。
「…………」
ヨルは沈黙を守っていた。守りながら、項垂れたハチの頭に手を置く。
また随分と、テンションの降り幅が大きいとハチは思った。後頭部に置かれた、手のひらの感触。
「だからさ、もう」
「オリャあああ!!」
唐突な気合い共に、ハチの頭が掻き乱された。脳内とか意識の話しでは無く、物理的に髪の毛と頭皮が。
わしゃわしゃと、ペットでも可愛がるみたいに。ハチは当然、抗議の悲鳴で応える。
「うわ! うわうわ!! ちょ、ちょっと待てこのっ……! このオンナッ!!」
「ヨ・ル・だ・よ! このハチ公め!!」
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